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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)520号 判決 1960年5月06日

主文

原判決及び第一審判決中判示第一の(二)につき罰金を言渡した部分を破棄する。

公訴事実中右判示第一の(二)の連合国占領軍財産不法所持の点につき被告人を免訴する。

その余の本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人河和金作の上告趣意第一点について。

所論は、昭和二四年政令三八九号一条の規定の趣旨は一種の占領管理行為に過ぎないものであって、憲法二九条の保障内の行為を禁止するものであるから、占領終了後もこれを禁止、処罰せんとする昭和二七年法律一三七号三条の経過規定の存在にかかわらず、同令に基づき処罰する原判決は違憲であるというにある。

しかし、所論政令三八九号は、一面連合国占領軍の占領政策遂行の目的を達成するために制定されたものではあるが、他面わが国の国内経済維持を目的として制定されたものであって、憲法二九条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和二八年(あ)第三九九六号同三五年三月一六日言渡、昭和二七年(あ)第五二二一号同年同月同日言渡の各大法廷判決参照)とするところであるから、所論は採るをえない。

同第二点について。所論は単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。しかし、所論もいうとおり、本件公訴事実中第一審判決判示第一の(二)の所為については、昭和二七年政令一一七号大赦令一条八三号により大赦があったので、刑訴一一条五号、四一三条但書、三三七条三号により、原判決及び第一審判決中判示第一の(二)につき罰金を言渡した部分を破棄し、右公訴事実につき被告人を免訴すべきものである。

しかしてその余の本件上告は理由がないので刑訴四一四条、三九六条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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